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HOME | ニュース | ニュース2019 | 会長挨拶)令和元年総会に向けて(news2019-05-19_1)

総会開催に向けて

 
 

東海大学原子力工学会会長 鶴岡靖彦

 
 平成時代が終わり、令和の時代が始まりました。
 
 我が国の原子力開発は、昭和、平成を経て令和時代へと引き継がれていきます。この度令和に入り最初の原子力工学会総会を開催する運びとなりました。会員の皆様におかれましては、万障お繰り合わせの上ご出席いただきたく、お願い申し上げます。
 
 原子力開発の現状は、平成時代の後半に襲った震災を契機に、再び多くの人々に多大な不安を与える結果になってしまいました。 一般社会からは、原子力への不安を解消しうる技術開発と放射線に関する啓発教育の充実が強く求められております。 一方、有権者からの反発を恐れ、原子力の将来に対する発言にしり込みをしている政治の現状は、人々の不安を一層強くしているように思えてなりません。 原子力を取り巻くこのような状況のもとで、原子力工学会員の多くの皆様が原子力の普及、教育、研究そして原子力産業の最前線で日々ご苦労されていることに心より敬意を表します。
 
 東海大学においては、ご承知の通り1956年(昭和31年)に応用理学科原子力工学専攻が創設され、原子力教育・研究が開始されました。その後着実に発展を続け、卒業生はすでに3000名を超えております。 東海大学工学会員の皆様は、文字通り我が国の原子力開発黎明期を担ってきた、まさにレジェンド的存在であります。
 
 2011年3月11日の福島第一原子力発電所の事故は、原子力関係者のみならず、福島県民をはじめとする日本人いや世界中の人々に衝撃を与えると同時に、当然ながら我が国における原子力教育に多大な影響を与えました。国立大学を含めて大学の原子力工学科への入学生は激減してしまい、東海大学においても例外ではありません。
 
 世の中の流れは、再生可能エネルギーの開発と当面の化石エネルギー依存へと舵を切りました。 炭酸ガス放出の問題が認識されているにもかかわらず、エネルギー需要の増大により地球温暖化やむなしの風潮が徐々に自然環境の破壊へとつながることに人々が気付くことになるのは、最近の異常気象をみれば、さほど遠い将来ではないと思われます。
 
 人々が20世紀において手に入れた原子力を、平和利用の柱として開発された原子力発電は、21世紀に入り再び我々に問題提起したことになります。今後、人類の幸福と地球の自然を守ることに責任をもちつつ、これまでに蓄積されたノウハウや福島の経験を活かし、原子力産業の発展に真摯に取り組むことが求められているのではないでしょうか。この意味で、大学における原子力教育と研究は続けなければならない、と同時にこの原子力工学会の存在意義は決して小さなものではないと思います。
 
 このような状況の下で開催される今回の総会は、会員相互の懇親を通して工学会活動のさらなる充実と共に、東海大学における原子力教育・研究の一層の発展につながるものと考えます。 会員の皆様のご出席を衷心よりお願い申し上げます。