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会長挨拶
東日本大震災(東京電力福島第一原子力発電所事故)から10年

 
 

2021年3月25日
東海大学原子力工学会会長 鶴岡 靖彦(1965年卒)

 
 2001年、原子力工学科は学科名をエネルギー工学科に変更し、2010年再び原子力工学科として再出発しました。その翌年2011年3月東日本大地震が発生し、それに伴って襲いかかった大規模津波によって東京電力福島第一原子力発電所(1F)は原発史上まれにみる悲惨な事故に見舞われ、その結果、多くの人々に多大な損害と不安を与えてしまいました。この事実は原子力工学科への入学希望者の激減をまねき、大震災後10年を経た現在に至ってもなお入学者の減少は収まらず、本年度(2021年度)をもって学生募集を停止することになりました。しかしながら、東海大学において築かれた原子力工学の伝統は将来にわたって本工学会が引き継いでいかなければならないと考えます。東海大学原子力工学会は会員相互の親睦と同時に原子力に関する情報交換の場として、これからも存続させていく意義がますます大きくなる、と思われます。
 
 東日本大震災から10年、多くの会員の方々はそれぞれの立場で1F事故後の対応に追われる日々を過ごしてこられたことと思います。また、卒業以来原子力関係に直接携わってはいないが、3.11当時原子力工学科卒業ということで、ご友人やご家族などから原子力や放射線に関するコメントを求められたこと、あるいはご自身で感じたことなどがあったかと思います。この度、原発事故に関連し、会員各位が経験したことなどを東海大学原子力工学会として記録に残して置く必要を感じ、本企画を立ち上げた次第です。
 
 今回は、これまでに事務局に到着したものを掲載しましたが、今後2021年末までこの企画を続けたいと思いますので、是非ご投稿いただきたくお願い申し上げます。



原稿の送付先
tk-if@tokai-atomic.net
「東電事故原稿募集」と件名に記載してお送りください。
 
 なお、内容に関しては事務局において、東海大学工学会として不適切と考えられるものについては、勝手ながら不掲載とさせていただきますことをご了承ください。 
東京電力福島第一原子力発電所(事故前)出典:東京電力ホールディングス 

 2011年3月11日(金)14時46分に宮城県沖130㎞、深さ24㎞を震源とした東北地方太平洋沖地震が発生した。地震の規模はマグニチュード9.0であった。
 
 この地震により波高10m以上の巨大な津波が発生し、東北地方と関東地方の太平洋沿岸に甚大な被害が発生した。
 
 地震から約1時間後に遡上高さ14mを超す津波に襲われた東京電力福島第一原子力発電所は1-5号機で全交流電源を喪失した。原子炉を冷却できなくなった1号炉、2号炉、3号炉で燃料棒が溶ける炉心溶融が発生し、水素爆発により、1号機、3号機、4号機の原子炉建屋が損壊した。この事故により大量の放射性物質が拡散する重大な事故が発生した。
 
 炉心溶融を起こした福島第一原子力発電所は廃止措置となり、原子炉建屋内の燃料プールに格納されていた燃料棒は4号機が2014年12月に、3号機は2021年3月に完了した。東京電力は2031年までに全てのプール内核燃料を回収する予定だが、2021年から行うとされていた、溶け落ちた核燃料の回収は遅れている。
 
 廃炉作業は今後30~40年間続くとされている。これを成し遂げるためには現在、原子力工学を学んでいる学生諸君の力を必要としている。

東京電力福島第一原子力発電所(事故後)出典:東京電力ホールディングス