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HOME | ニュース | ニュース2024 | 11月3日にホームカミングデイが開催され、鶴岡名誉教授のご講演がありました(講演概要ご紹介)。(news2024-11-30_1)

第70回 建学祭 鶴岡名誉教授による講演概要 

 
2024年11月3日 於:東海大学湘南校舎

 

地球温暖化とエネルギー ―その深刻さを克服できるのか?―」
 

 炭酸ガスが地球温暖化の元凶なのか? エネルギー需要の増大に限界はあるのか?
 
 太陽から地球に降り注ぐエネルギーは1㎡あたり1.37kWであり、大気圏における吸収や散乱により地表では1㎡あたり1.0kWとなる。太陽内部での核融合反応により放出されるエネルギーは太陽表面温度を約6000℃に、そして地球表面温度を15℃に保っている。
 
 地球温暖化を引き起こしているのは、化石燃料を使用することによる温室効果ガス(炭酸ガス等)の増加が原因と言われている。しかしながら、地球をとりまく温室効果ガスが存在しなければ地球表面温度は-18℃となり、現存する地球上の生命は殆ど生存できない。
 
 現在、日本の総エネルギー需要は年間20EJ(20×10^18J)。
そのうち電力は1兆kWh(3.6EJ)である。1951年を1としたGDPは2015年度で16.5倍に対して電力需要は30倍に増加している。今後、EV車の増加、リニア新幹線の開通、AIの活用等消費電力量は益々増大する。このエネルギー需要の増大を補うため再生可能エネルギーが注目されているが、太陽光発電をはじめとする自然エネルギーはエネルギー密度が低く不安定であり、また自然環境や生物多様性保全の観点からそれらの大規模開発は不適切と言わざるを得ない。
 
 もし、GDPの維持拡大を是とするなら、安定的なエネルギーの確保のため原子力エネルギーの積極的な活用が必要であろう。しかしながら、原子力の利用については原子力や放射線に対する人々の理解が不可欠である。日本原子力学会は現状の中等教育における教科書の原子力および放射線に関する記述内容について調査し提言をまとめ、関係機関に提出し公表した。だが、これまでこの件に関する改善がなされたという情報は得られていない。
 
中等教育および大学初年級における自然科学教育の充実が待たれるところである。
 

まとめ

1.地球温暖化は、温室効果ガスの過剰な放出が主たる原因ではなく、エネルギー需要の増大が最大要因である。
 
2. 電力需要の上昇率はGDPの上昇率の約2倍であり、GDPの値が人間の幸福追求の指標であるとの考えを是とするなら、エネルギー需要は限りなく増大する。
 
3.増大するエネルギー需要を満たすためには、密度の低い自然エネルギーのみでは賄いきれない。しかも、大規模な太陽光発電や風力発電は自然環境保全や生物多様性保護と矛盾する。
 
4.エネルギー需要の増大に対しては積極的な原子力の利用が必要である。そのためには人々の原子力や放射線に関する正しい知識と理解が必須である。
 
5.際限ないエネルギー消費の拡大をそのままにして、温室効果ガス削減に偏った地球温暖化への対応では、「人間による際限のない幸福追求が、結果として人間みずからを際限なく不幸に導く」ことになるだろう。